熱力学はマクロな熱平衡状態や熱が絡む現象を記述する理論です。熱力学は19世紀には確立されていましたが、1990年台の後半から熱力学の理論が整備し直されて、21世紀に伝統的な教科書とは異なる分かりやすい教科書が出版されました。今から熱力学を勉強する人は、そのような整備し直された形式のものを勉強するのが良いと思います。

オススメは[田崎]→[清水]という順番で両方読むことです。あと久保亮五の演習書で問題を解くことです。

現在確立されている熱力学は、熱平衡状態及びその間の遷移に関する理論であり、非平衡状態には適用することができません。非平衡状態に関するマクロな理論、非平衡熱力学を構築するのは重要な問題として残っています。熱力学を熱ゆらぎが大きいミクロな系で展開した確率熱力学や熱力学の非平衡定常状態への拡張である定常状態熱力学、情報理論と組み合わせた情報熱力学が考えられています。残念がら、これらの日本語の教科書はありません。


入門書

熱力学―現代的な視点から(田崎晴明)

初めにいくつかの要請をおき、そこから演繹的に理論を組み上げていくタイプの教科書です。次に紹介する[清水]とは異なり、操作と仕事に関する要請を始めにおき、エントロピーは後から定義する形で書かれています。そのため物理的な意味が分かりやすいと思います。ただし温度については、温度という量があることは認めましょうという形で書かれています。また[清水]では化学反応への応用はあまり書かれていないですが、[田崎]では詳しい説明が載っています。とりあえず、とてつもなく良い本だと勧めています。

 

熱力学の基礎(清水明)

[田崎]と同様に熱力学の要請を定め、そこから議論を展開する教科書です。[田崎]と異なる点は温度を基本変数には取らず、示量変数のみを基本変数とすることで、相転移があっても破綻しない堅固な論理構成となっています。しかし、初めにエントロピーの性質を基本要請として置くため、物理的な意味が分かりにくく、初学者が読むと???となると思います。[田崎]と比較しながら読むと熱力学への理解が深まります。

[田崎]と[清水]に関しては相転移P(@phasetr)さんも書評をブログに書いていらっしゃいます。→http://phasetr.blogspot.jp/2013/04/blog-post.html 僕のレビューよりも詳しいものになっているのでぜひ読んでください。[田崎]→[清水]という順番で両方読むことを勧めているのは共通しています。