真空中の電磁気学について書かれた教科書のレビューをします。物質中の電磁気学については良い日本語の教科書が存在しないのでレビューしません。

電磁気学については、電磁気学の教科書を読む前にベクトル解析を勉強しておいたほうがわかりやすいです。下に上げている教科書の中では、グリフィスの電磁気学で勉強するのが良いと思っています。


contents

初級レベル

電磁気学Ⅰ・Ⅱ(長岡 洋介

初学者向けの本であり、Maxwell方程式は最後に出てきます。大学1年の夏休みに読み始め、その夏休み中に2巻目まで読み終えることができました。初学者が読むのには良いと思いますが、内容は物足りないので、中級レベルの本を次に読む必要があります。

よくわかる電磁気学(前野 昌弘)

前野さんのよくわかるシリーズの一冊です。初等力学同様、非常に丁寧に書かれた入門書です。


中級レベル

理論電磁気学(砂川 重信)

日本人の書いた電磁気の本の中では最も有名な教科書であり、真空中の電磁気学の基本的内容が網羅されています。Maxwell方程式を知っていることは前提であり、電磁気学の基本的な内容を理解している人向けです。複雑な式の変形が丁寧に説明されていますが、数式は少し見づらいです。一方、後で紹介するGriffithsの教科書は数式も見やすいと思います。電磁気を勉強するための日本語の本としては良いと思います。あと、読む前にベクトル解析だけでなく、特殊関数とFourier変換の知識もあったほうが良いです。

電磁気学 I・II(David J. Griffiths)

アメリカで標準的な教科書として使われているらしい本の和訳です。私は理論電磁気学の補足用として読んでいました。内容は理論電磁気学に比べると少ないですが、電磁気学及び特殊相対性理論の一般的な話題は網羅しており、日本の本にはないJefimenko方程式等の話題もあります。ベクトル解析などの初歩的な内容についても丁寧に解説が付いているため、初学者でも読みやすいと思います。また日本の教科書とは異なり、演習問題も多く載っているというのが良い点です。

場の古典論―電気力学,特殊および一般相対性理論 (ランダウ=リフシッツ) の前半

ランダウの場の古典論も名著としてよく知られています。前半部分が特殊相対論及び電磁気学になっていますが、電磁気学についてはすべての内容を網羅しているわけではないです。丁寧な説明を書くのではなく、本質となる部分だけを抽出した説明がなされています。その分、読者が行間を埋めなければいけない部分も多く、最近の教科書に比べると読みにくいです。特に特殊相対論の部分の後半は読みにくいと思います。正直、電磁気学を勉強するのには他の本を使ったほうがいいように感じます。ゼミの本として、みんなで読むには色々と議論ができて面白いかもしれません。


上級レベル

マクスウェル方程式―電磁気学のよりよい理解のために(北野正雄)

電磁気学の理論を現代的な立場から再考しています。微分形式及び超関数を積極的に用いて説明をしており、電荷密度、電流密度、電場、電束密度などと微分形式との対応関係、その意味が図も交えて分かりやすく解説されています。特に、電場と磁場は1形式で、電束密度と磁束密度は2形式であるという説明は面白いです。ただ記号や表記法が独特であり、読みにくいところが多いのが残念なところです。ただ普通の本には書いてないことが多数あるので、参考になります。また、新井先生の「物理現象の数学的諸原理」にも微分形式と電磁気学の話が載っています。

面白いと思ったところ:双対ベクトルの平面群による図示、反対称化の幾何学的意味、微分形式のイメージ、電磁界曼荼羅、微分形式によるrot,divのイメージ、半無限ソレノイド、粗視化、磁極-廃止されるべき概念などなど

ジャクソン電磁気学(J.D.ジャクソン)

電磁気について網羅的に書かれている本です。辞書的に使うのが良いと思います。

電磁気学の基礎 (太田 浩一)

ジャクソン電磁気学よりも網羅度は低いですが、歴史的な背景についてもきちんと書かれている本です。