院試の専門科目(物理)の勉強について書きます。

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やったこと

院試勉強を始めたのは3年生の3月からで、始めに直近の過去問を解いてどのような問題が出るのかを確認しました。この時期はあと量子力学の復習(J. J. Sakuraiの演習問題)を少しやった程度で他にはほとんど何もやっていませんでした。

5月から本格的に院試の過去問(第一志望でない大学も含めて)解き始めました。毎週一回、東大を受験する友達と2年分の院試問題の答え合わせをやっていて、それを院試の直前の週まで続けていました。最終的に第一志望の専攻の問題については11年分解きました。他の大学も含めると合計30年分程度です。コロキウムの発表の準備が6月に終わり少し時間ができたので、有名な久保亮吾の統計力学の演習書も少しやりました。

 勉強方法

勉強の仕方としては、まず教科書や共立の問題集などで基本的な事項を復習をしてマスターしてから、院試の過去問を5年分くらいやれば十分だと思います。どこの大学でも院生の人が院試の解答を10年分くらいは作っていると思うので、研究室訪問したときなどに解答集を貰うといいと思います(もちろん、学生が作ったものなので正しい保証はありませんが…)。10年以上も前の問題を解いても問題形式や傾向が変わってしまっている場合があったり、解答が無かったりするので特に有用だとは思いません。友達に物理の出来る人がいるなら、週一回程度、一緒に過去問の解答の確認をするのも良いと思います。また、解けない問題があったら深く悩みすぎずに仲の良い助教やドクターの方に質問しましょう(そのために助教の人と仲良くなっておこう)。

結局のところ、院試で出てくる問題の大部分は基本的な問題で難問はほとんどありません(特に東工大)。基本的な問題は、力学・電磁気学・物理数学は共立の演習書、統計力学は久保亮吾の演習書に網羅されているので、これらの演習書の問題がきちんと解ければどこの大学でも問題無いと思います。もちろん、共立の演習書は問題数が多いため、全て解くのは不可能に近いですが、見ただけで解法が分かる問題や前の問題とやり方が同じ問題などを省いて上手く勉強すれば良いと思います。時間があれば他の大学院の院試問題を解くと良い演習になると思います(例えば、・・・・・・は良い演習になると思います)。同じ題材の問題が他の大学院の院試で出題される場合もあります(例えば、平成19年度の東大相関基礎科学系の力学と平成27年度の東工大の力学)。ただし重要なのは基本的な問題を解けるようになることなので、他の大学の院試問題ばかり解きすぎて基礎が疎かにならないように注意しましょう。

具体的な参考書など

次に私が勉強するのに使った本を紹介します。

※サイエンス社(数理工学社)から出ている院試の問題集については全くやっていないので紹介しません。

力学

解析力学の純粋な理論的な内容(正準変換やHamilton-Jacobi方程式)の院試問題は見たことがありません。比較的、剛体や回転座標系に関連した問題が多いように感じます。

院試で出題される程度の内容であればLandauの力学が簡潔で読みやすいです。山本義隆の解析力学とかも読んでいましたけど、院試には役に立ちませんね(解析力学を理解する上では大いに役立った)。演習は詳解力学演習をやればOK。

電磁気学

教養の電磁気学の教科書だと内容が足りないと思います。もっと厚めの教科書を読んだほうが良いです。有名なものだと砂川の理論電磁気学、Jackson電磁気学、太田の電磁気学。私が院試勉強のときに参考にしたのは、

砂川 重信 『理論電磁気学』

です。挙げた三冊の中では砂川が1番読みやすいと思います。英語であればGriffithsの電磁気学も分かりやすいです。

演習書は

詳解電磁気学演習

など。

量子力学

正直、あまり勉強をしませんでした。

調和振動子を演算子法で解くやり方については最初から最後まで何も本を見ずに出来るようになっておく必要があります。調和振動子関連の問題が圧倒的に多いです。コヒーレント状態もよくでます。角運動量の合成の一般論(CG係数の性質など)や縮退のない1次の摂動論以外の近似法(2次の摂動、時間に依存する摂動、変分法、WKB法)、1次元の場合を除く散乱のような量子力学の教科書の後半に書かれている内容に関する問題はほとんど見ませんでした。テストの時間内で解ける1次元の系または2準位の系の問題が多いです。

基本事項の確認、演習共に

猪木 慶治, 川合 光 『量子力学I』

J. J. Sakurai, 『現代の量子力学』

をやりました。いぎかわ!の1巻をマスターすることが最重要課題です。2巻の内容は院試問題を解く分にはどうでもいいです。ただ、いぎかわ!のブラケットの説明とかは分かりにくいので、そういう部分はJ. J. Sakuraiを読むのが1番良いです。

量子力学については共立の演習書をもっていなかったのでやっていません。

統計力学

基本的な内容の確認は、

田崎 晴明, 『統計力学』

統計力学の勉強をするのには、やはりこれが1番。

演習は、こちらも名著の

久保 亮吾, 『大学演習 熱学・統計力学』

特に例題と演習問題[A]をやりましょう。

統計力学は割と苦手な人が多いイメージではあるけれど、理論を理解してしまうと問題のバリエーションは少ないので楽に点数がとれてしまう分野だと思っています。

物理数学

出る内容は線形代数(特に固有値問題)、複素関数(ほとんどの問題が留数定理を使った積分計算)、Fourier変換(Laplace変換はあまりない)、微分方程式(常微分方程式、波動方程式)、特殊関数(ガンマ関数、Legendre多項式、Laguerre多項式、Hermite多項式くらい、楕円関数の問題は見たことない)、変分法(Euler-Lagrange方程式の導出、最速降下曲線、最小表面積の回転曲面)

基本的内容の確認は

Fourier変換:西森 秀稔『物理数学II―フーリエ解析とラプラス解析・偏微分方程式・特殊関数』

複素関数:チャーチル-ブラウン『複素関数入門 』

西森先生の講義ノートのpdf版が公開されているのかどうかは分かりません。Fourier変換の参考書は数多くあるので、どれか1冊読めば十分です。

演習は、これまた

詳解物理応用数学演習

東京図書の『大学院への数学』よりも共立の問題集のほうが多くの問題を扱っていて解説も丁寧でよい。

実験

実験については勉強の仕方がわからずに勉強をしない人や入試本番でも白紙で解答を提出する人もいますが、実験についてもきちんと勉強をしたほうがよいです。実験の分野で出題されるのは、統計、電子回路、真空技術、基本的な物性、放射線、素粒子実験、光学等です。受験する大学の物理実験のテキストが入手できるのであれば確認しておくと良いです。稀にテキストに書いてあることがほぼそのまま出題されることがあります。

数値計算の問題で基本的な物理定数(素電荷や光速度)が与えられていない場合もあるので、有効数字2桁までは覚えておく必要があります。

目標点数

受ける大学、志望する研究室によって様々だと思います。大学受験の時のように6割とれば良いというものではありません。

何点取ればよいみたいな話しは真に受けてはいけません。

満点を取りましょう!!